ブラッティ・エンジェル
 でも、やっとチャンスが来た。俺が1人で店番していた時にヒナガがタイミング良く来た。
 店員は俺だけ。絶好のチャンスだった。
 見慣れた店がどこか違う違う空気に満たされたみたいな、変な感覚に襲われて。緊張してたんだな。
 カウンターにヒナガが来るまでに俺は、髪に服にとにかく整えるものは整えた。
 でも、すぐには話せなかった。
 やっぱり、どんな恋にも邪魔って入るじゃん。まあ、そんときのは軽いものだったけど。
「にーちゃん、おかわりくれっか?」
「かしこまりました~」
俺は心の中で舌打ちをした。
 ここは店で、もちろん客がいるわけで、二人っきりってわけじゃなくて、俺は一応定員ってわけだ。まあ、仕方ないのだけれど。まぁ、これも彼女と会うためで。
 そう言えば、このエプロンチョーださくないか?
 この店の制服みたいなもんだから、脱げないわけだけど…。
 なんか、マシに出来ないものか…。
 俺は客におかわりを持って行きながら、思案した。
 そこでひらめいたのが、このバンダナってわけだ。
 調理実習で三角巾の代わりに使ったのが、ブレサーのズボンのポケットに入っていた。
 「私にカプチーノお願いします」
「かしこまりました」
心臓の音をBGMのなか、俺はあいつのカプチーノを入れた。
 らしくなく、手が震えていたっけな。
「どうぞ」
ぶっきらぼうな不機嫌そうな声だなぁって思ったな。俺って、緊張するとそうなる癖で。
 でも、カプチーノは我ながら良いできだ。コーヒーとかは入れる人によって、味は違うもんだ。まぁ、豆も関係してるけど…。
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