ブラッティ・エンジェル
「いっただっきま〜す。」
脳天気な望の声が、モダンな造りのファーストフード店に響く。
「恥ずかしいよ。」
サヨのそんな言葉には耳をかさず、胸の前であわせていた手を下ろし、ハンバーガーにかぶりつく。
 その顔は、サンタからプレゼントをもらった、子供のようだった。
「いただきます。」
サヨは手を合わせ小声で、言う。
 サヨの前には、綺麗なドーム型をしたオムライスと、水。
 ユキゲはというと、またプリントミルク、そしてホットケーキ。昼から、よくそんなに甘いものを・・・。
 サヨは、望をチラチラ見ながら、オムライスがのったスプーンを、口に運ぶ。
 「それでさ、天使って何してるの。」
望は、ハンバーグをかぶりつきながら聞いてくる。
 サヨは行儀が悪いと眉を寄せながら、スプーンを皿の上に置いて水を飲む。
「お亡くなりになった人間の、迎えに行くの。」
サヨはそう言って、またスプーンを持つ。
「それってつまり、俺たちが想像している、てか、勝手に決めている天使みたいなもの?」
「そうね。人間が想像している天使に、私たちは近いかな。」
「私たちって、違うのもいるの?」
「ええ。私たちみたいに、迎えに行く天使じゃない天使がいるの。」
次を進めようとしたとき、サヨのポケットが震えた。
 サヨは驚きながら、ポケットから携帯電話を取り出す。黒い折りたたみの携帯電話は、人間のものと寸分も違わなかった。
 サヨは携帯電話を開いて、眉間にしわを寄せる。
「おい、もしかして・・・。」
「うん、そのもしかして・・・。」
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