ブラッティ・エンジェル
 しかし、この睨みあいに割って入ったのは意外な人物だった。
「雨宮じゃん!」
空気を読んでいないだろう、望と同じ制服を着た少年だった。望が驚いたような、気まずそうな顔をした。
「加藤」
「え、それ誰?」
加藤と呼ばれたその少年は、サヨを見ると意外そうな驚いたような顔をする。そして、その顔を次第ににやけへと変わった。
「あ、もしかして…」
「彼女だよ」
照れくさそうに、望はサヨに目を落とした。ぼーっと見上げていたサヨと目があって、ほんのり赤くなった。
 突然の乱入者により、放置されたセイメイは小さくため息をついた。
「少し、大人げなかったのではありませんの?」
ウスイはそのセイメイに、小さく耳打ちをした。もう一度ため息をついたセイメイは、サヨと必然的に目に入ってくる望に視線を向けた。ウスイの問いかけには、答えなかった。
 加藤は望の背中をバシバシ叩いて、大きな声で笑った。
「そっかぁ、あの望にやっと彼女がねぇ」
「痛いんだけど」
「しかも、こんなトコで抱き合っちゃって。恥ずかし~」
そう言われて、二人は周囲の視線と自分達がしていることに気がついた。どちらからとなく、二人は慌てて離れた。
 その様子を、加藤は弓なりに細められた目で見ていた。
 そして加藤は、恥ずかしそうに目を泳がせていたサヨに、手を差し伸べて愛想のよい笑顔を向けた。
「俺は加藤。望のクラスメート。よろしく」
「…私は、サヨ。こちらこそ」
ぎこちなくサヨも挨拶をして、握手をした。その手は大きく上下に振られ、頭が揺れた。
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