ブラッティ・エンジェル
「誰?あれ。」
二人が消えると同士に、望が呟いた。
サヨは疲れたように、店の壁に寄りかかりうなだれた。
「セイメイとウスイ。黒天使っていって、寿命がくる前になくなった人間の、魂を送るの。セイメイが黒天使で、ウスイが見習い。私とユキゲと同じ。」
そう言うサヨの声は、あきらかに疲れが表れていた。が、そんなことがわからないのか、望の顔はキラキラ輝いていた。
 うわぁ、眩しい。と、サヨは呆れ顔を両手で覆った。
「セイメイ達を追おう!」
「はぁ?」
サヨは、何となく気づいてはいたが、間抜けな声が出てしまった。
「いやよ。さっきの状況、見たでしょ。」
天を仰ぎながら、ため息混じりに言うが、望の気持ちは変わらないようだ。
 そんな望をサヨは、呆れたように見る。
 しばらくそうして、サヨは折れた。
「仕方ない。今日は、あなたに付き合うんだったよね。」
サヨはため息をついて、携帯電話をパチンと開ける。
 慣れた手つきで、数字を押していく。
 しばらくして耳にそれを当てる。
「もしもし。」
あきらかに嫌そうな声音が、サヨの口から出る。
「今どこ?・・・知ってるよ。・・・はぁ?違うから。まだ幽霊(ゴースト)いる?うん。で、どこにいるの?・・・だから、違うって言ってるでしょ!切るから!」
ブチッと、サヨは力強く通話を切る。
 イライラした様子でサヨは、バタンと携帯電話を閉じる。
 睨むような顔をしたまま、二人を振り返る。
 ちょうど2人は、可笑しそうにひそひそ話をしていた。が、サヨの視線を感じて、黙る。
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