ブラッティ・エンジェル
 ユキゲの興味は今度は、セイメイに向けられた。
 今まで一緒に行動していたパートナーの、雑な扱いを気の毒に思っていたセイメイは、突然向けられた視線にギョッとした。
 自分は何をされるのかと、ひやひやしていた。さっきの、ウスイのこともあって警戒心を強めていた。
 すたすたと歩いてくるユキゲに、若干セイメイは逃げ腰になった。
 セイメイの目の前まで歩いてきたユキゲは、ぴたりとその場に気を付けをした。
 自分に起こるであろう悲劇を想像してぎゅっと目を閉じていたセイメイは、何も起こらないことに安心して目を開けた。といっても、目を開けたといっても元々細め、閉じていたかもわからない。あまり、目のあたりには変化が見えない。
 そんなセイメイが見たのは、勝ち誇ったような顔をしたユキゲだった。
「え?なにかナ?」
よくわからない、ユキゲの行動にセイメイは困惑した。
 ユキゲは、すっと手を挙げた。若干、身の危険を感じたセイメイは肩をすくめた。
 しかし、その手はコツンと頭のもっとも高いところに当たった。ユキゲの顔が少しゆがむ。その手を今度は自分の頭に乗せたユキゲは、すっとまっすぐにセイメイの方にスライドした。またもや、頭に軽く当たる。おかしいとでも言うように、同じ場所を同じように軽くぶつける。
「ちょっと、痛いんだけど」
「おかしいなぁ。勝ったと思ったんだけどなぁ。おかしい」
真剣に、つぶやくユキゲ。
 セイメイはあきれた。なるほど。身長の話か。ということは、自分の変化に気づいたのだろうか。自分が天使になったと。
 おかしそうにユキゲを眺めていた神は、もう一度指を鳴らす。すると、ユキゲの前に全身鏡が出現した。
 ユキゲと近い距離にいたセイメイは、鏡が現れた反動により、少し後ろに下がったところに尻餅をついた。
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