ブラッティ・エンジェル
「さてと、ヒナガはどうしようか。こればかりは僕の独断では決められなかったよ。君が決めて」
神の言葉にヒナガは眉をひそめた。神が決められなかったとは、どういうことなのだろう?ヒナガの今後を神はどうお考えなのだろう?
「神になるか人になるか」
神が出した選択は、安易なものだった。ためらいなく、ヒナガは人だと答える。しかし、もう一つの選択しに疑問を抱く。神になる?そんなこと、たかが神の使者がなれるものなのだろうか?そして、なぜ、ヒナガ?
「君は、人と答えるだろう。でも、知っていて欲しくてね」
悲しいようなほほえみ。残念そうといってもいいだろう。
「僕は少しばかり、不向きな気がして。考えも古いだろうしね」
神の顔には無邪気な子供のような笑顔が戻っていた。
 ヒナガには、神の言っていることが理解できなかった。今まで、彼の元で働いていて不満などなかった。不向き以上に、彼こそが神だとこのときですら思う。
 彼は、いったい何を考えているのだろう。
「君は、僕のようなことをしてみせた。天使を作りあげた。慈悲もあるしね」
「神は荷が重すぎます。あなたこそ、神、その方です。私はそう思います。あなたしか降りません」
「そうかなぁ。ちょっと、買いかぶりすぎだよ~」
しかし、神はまんざらでもなさそうだった。
 わからない人だと、ヒナガは思った。わからなさすぎて、少し、怖い気がした。
「仕方ない。でも、君にやって欲しい仕事があるから、人間になるのはちょっと待ってね」
神はくるりと人差し指を回す。すると、ヒナガが何も言う前に、その場から消えた。何も聞きたくないとでも言うように。
 残念だと、神は心から思った。彼女なら、後継者になれる唯一の存在だと思ったのに。
 小さく、ため息をついた。
 それでも、我が子の幸せ願わない親はいない。彼女の幸せが一番。彼女の選択を尊重したいから。
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