ブラッティ・エンジェル
 探していた人をサヨはやっと見つけた。しかし、おかしい。一人じゃない。サヨは振ろうとした手を下ろした。
「ごめんサヨ。ちょっと二人を発見して」
望が説明する前に、サヨは望の後ろにいた二人に抱きついた。姿は以前より少し変わったけれど、見間違えるわけない。大切な友達に再会できて、とても嬉しかった。
「ユキゲ!ウスイ!」
抱きつかれた二人も嬉しそうに、サヨのことを抱きしめ返した。いったい何週間ぶりの再会だろう。まさか、天使になっているなんて。
 思う存分抱きしめあった三人は、お互いいろいろな世間話に花を咲かせていた。
 その後天界はどうなったのか。今はどうしているのか。その後望とはどうなっているのか。三人はとにかく話が尽きるまで、望の存在を忘れて話し込んだ。
 別に、望は早く話が終われと思ったわけではない。ずっと一緒だったいわば親友と久しぶりの再会。つもる話はあるだろう。でも、少し寂しい気がする。嫉妬ってやつかな?
「幸せそうでなによりですわ」
「ああ。一時はどうなることかと思ったぜ」
なんか、申し訳ないなとサヨは改めて今までのことを思い起こす。
 たくさんのことがあって、たくさんのことを考えて、たくさんの人に迷惑をかけて支えられて。本当にこれでもかってくらいたくさんのことがあった。
 この幸せが嘘のように辛かった。あの辛さが嘘のように幸せだ。違う。どれも嘘ではなく本当のこと。
 全部が私。
「あ、そうでしたわね」
「ああ、わ~ってるって」
二人とも、何もないところに話しかけていた。なるほど、昔のサヨ達に当たり前だった光景は、普通の人にはこう見えていたのかと、サヨは一人笑っていた。
「申し訳ありませんわ。仕事がありますの」
「オレも。悪いな」
二人は忙しそうに去っていった。昔の自分がこうだったんだと、サヨは懐かしくなった。
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