ブラッティ・エンジェル
 するりとセイメイの腕から抜け、望に近づく。そして、その肩に手をかける。
「ごめんね。今度、私の仕事に連れて行ってあげる。だから、元気だして。」
サヨがそう言うと、望はぱっと顔を明るくした。子供みたいな、無邪気でキラキラした笑顔。
 サヨの手を取って、期待の眼差しを向ける。
「ホント?ありがと。」
今回は、サヨは後悔はしなかった。逆にホッと安心した。
「僕も行っていい?」
「はぁ?」
サヨは明らかに嫌そうな顔をして、ニコニコ顔のセイメイを振り返った。
 地面にいたふたりも嫌な顔をした。
「そんなの許しませんわ。こんな方とまた会うなんて。」
「こっちだって!お前みたいな、性悪女の顔を見るなんて嫌だぜ!」
「私も、いやよ。断るから。こないでよ。」
自分の意見が全面時に拒絶されたセイメイは、腕を組み困ったような笑みになった。
 地面にあぐらをかいてふてくされているユキゲを捕まえた。
「行くよ。ユキゲ、ノゾム。」
そう言って、サヨは来た道を歩き出した。
 望がその後を追うように歩き出したとき、ぼそっと冷たい声でセイメイが言った。
「君がサヨといることは、サヨにとって辛いことだよ。」
「え?」
望が振り返ったときには、セイメイ達の陰一つ無かった。
 どういうことだろうと、望が首を傾げているとサヨが自分を呼ぶ声が聞こえ、考えるのを止めにして後を追った。
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