ブラッティ・エンジェル
「サヨ、親しくなってないだろうね。」
またぎくっと、肩を揺らす。
「もちろん。当たり前じゃない。」
と、携帯が軽快な音楽を流した。
イズミが誰?という眼差しを、私におくってくる。
「せ、セイメイよ。まったく、しつこいの。」
私はそう言って、携帯を開けた。画面に『雨宮望』と表示されていた。
そう、彼に電話番号とアドレスを教えたのだ。
私がボタンを押そうとしたとき、イズミが携帯を取り上げた。
「セイメイって言ったよな。」
「それは、その…」
イズミが力強く、バタンと携帯を閉じる。
私は思わず、肩を震わす。
「サヨ!十年前のこと、忘れた訳じゃ無いよな?」
「忘れるわけ、無いよ。」
サヨの顔が暗くなる。
心配したユキゲは、サヨの肩まで飛んでいって、頬を撫でる。
サヨは、ありがとうというように指で頭を撫でた。
十年前の、あのことは今でも鮮明に思い出せる。
あのことを知っているのは、サヨとユキゲ、イズミに大天使のヒナガだけだった。
「だったら…!」
「イズミ、そのくらいにして差し上げなさい。」
凛と澄んだきれいな声で、激しい剣幕のイズミが押し黙った。
「ヒナガ。」
後ろを振り返ったイズミの目に、純白のドレスを揺らしながらゆっくり歩いてくる、優しいオーラを身にまとう女性だった。
「イズミ、サヨをあまり責めないでください。」
「だけど!」
「サヨと、ふたりで話しをさせてください。」
色素の薄い金の目が、じっとイズミを見据える。
イズミは仕方ないというようにため息をついて、きびす返した。
「シミズ、おいで!」
話の内容がまったくわからず、あたふたしていたシミズは一礼して飛んでいった。
それを見送ったヒナガは、ふんわりウェーブのかかった金髪を揺らし、サヨを見た。
「ありがとう。助けてくれて。」
「サヨ。私も、イズミと同じ気持ちです。
あなたはまた、同じ過ちを犯すのです?」
「それは…。」
「あなたが、私の友だから言うのですよ。」
サヨは俯き加減のまま、小さく頷いた。
「わかってるよ。希《のぞむ》の時みたいには、しない。」
またぎくっと、肩を揺らす。
「もちろん。当たり前じゃない。」
と、携帯が軽快な音楽を流した。
イズミが誰?という眼差しを、私におくってくる。
「せ、セイメイよ。まったく、しつこいの。」
私はそう言って、携帯を開けた。画面に『雨宮望』と表示されていた。
そう、彼に電話番号とアドレスを教えたのだ。
私がボタンを押そうとしたとき、イズミが携帯を取り上げた。
「セイメイって言ったよな。」
「それは、その…」
イズミが力強く、バタンと携帯を閉じる。
私は思わず、肩を震わす。
「サヨ!十年前のこと、忘れた訳じゃ無いよな?」
「忘れるわけ、無いよ。」
サヨの顔が暗くなる。
心配したユキゲは、サヨの肩まで飛んでいって、頬を撫でる。
サヨは、ありがとうというように指で頭を撫でた。
十年前の、あのことは今でも鮮明に思い出せる。
あのことを知っているのは、サヨとユキゲ、イズミに大天使のヒナガだけだった。
「だったら…!」
「イズミ、そのくらいにして差し上げなさい。」
凛と澄んだきれいな声で、激しい剣幕のイズミが押し黙った。
「ヒナガ。」
後ろを振り返ったイズミの目に、純白のドレスを揺らしながらゆっくり歩いてくる、優しいオーラを身にまとう女性だった。
「イズミ、サヨをあまり責めないでください。」
「だけど!」
「サヨと、ふたりで話しをさせてください。」
色素の薄い金の目が、じっとイズミを見据える。
イズミは仕方ないというようにため息をついて、きびす返した。
「シミズ、おいで!」
話の内容がまったくわからず、あたふたしていたシミズは一礼して飛んでいった。
それを見送ったヒナガは、ふんわりウェーブのかかった金髪を揺らし、サヨを見た。
「ありがとう。助けてくれて。」
「サヨ。私も、イズミと同じ気持ちです。
あなたはまた、同じ過ちを犯すのです?」
「それは…。」
「あなたが、私の友だから言うのですよ。」
サヨは俯き加減のまま、小さく頷いた。
「わかってるよ。希《のぞむ》の時みたいには、しない。」