ブラッティ・エンジェル
「何よこれ~」
ホコリの中、希がむっくりと起き上がるのが見えた。
 少し希がむせるのが見えた。
「これは~、少しひどいな…」
「すこし!?」
私は開きの悪い窓を思いっきり開けた。
 新鮮な空気が部屋に入っていき、古い部屋の空気が出て行くのが目に見えるようにわかった。
 振り向くと、まだホコリをたてているベッドに座ってのびをする希が見えた。
「ほら、早く下りて。洗濯するから」
私はハエを払うように手で下りるようにうながす。希はだだをこねる子供のようにやだやだと、手足をばたばたと動かし暴れた。
 またホコリの襲撃をうけた私は、さっき以上に咳き込み、涙が出てきた。
「いい加減にして~」
ひどい目に遭ってるのに、不思議と怒る気になれず、逆に笑えてきた。なんだか、楽しい気すらする。
 ホコリだらけの中、希の笑い声が聞こえた。
「どうだ、参ったか」
「は~い、参りました~」
しばらく、笑いあっていた。面白くて、ベッドを叩いてもっとホコリをたてた。いったいこのベッドには、どれだけのホコリが詰まっているんだろうってくらいホコリは出た。
 そうしていると、やっぱりこうなる。予想は、つくだろう。
 咳はのどがヒリヒリするぐらい出るし、涙が出すぎて瞼や頬にホコリや髪が張り尽くし、瞼が熱い。鼻水も出てきてしまう始末だ。
「これは、ひどすぎるや」
「ひどすぎなんてものじゃないよ。最悪」

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