ブラッティ・エンジェル
「ユキゲに全部聞いた」
「あんたが、話したの?ヒナガに話したの?あんたが!」
私は気が狂ったみたいにイズミと呼ばれた彼女の腕を掴み、ゆらした。叫び声は、まるで悲鳴のようだった。
「違う。違うんだ、サヨ。イズミは悪くねぇ。悪いのは…」
「あたしが大天使様に話したよ。ユキゲに聞いて直ぐにな」
私の中で何かがキレた。
 私は唇を噛みしめると、床に足を乗せ大きく腕を振りかぶった。私より背の高いイズミは、目をギュッと閉じ、覚悟を決めているとでも言わんばかりだった。
 怯えた風もなければ、驚いてもいない、ましてや逃げようともしていない。
 私は、興が冷めてしまったのか、振りかぶった拳を振るうことをせず、解いてしまった。
 しばらくの沈黙の後、イズミは口を開いた。
「あんたが、あんな想いでいたなんて。あんな覚悟をしていたなんて、しらなかった」
私の想いは強すぎた。私の覚悟は弱すぎた。
 だから、こんな結末になってしまったんだ。
 大天使様に話した彼女のせいでも、彼女に話してしまったユキゲのせいでも、希を殺した死神のせいでも、悪魔を従えている魔王のせいでも、大天使様でも神様のせいでもない。
 全部、私のせい。
「知っていても、結果は変わらなかったよ。どんな道を辿ったって、希はこうなった。私のせいで」
その後に、とても長く重く冷たい沈黙が流れた。

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