ブラッティ・エンジェル
「あなたの処分が決まりました」
私はヒナガの書斎に呼ばれた。
彼女はいつもでは見ない、硬い顔をしていた。机の上で手を組んで、ジッと私を見据える。その目には、いつもの親しみやすさはなく、大天使としての光を宿していた。
「あなたには、これからも以前のように仕事をしてもらいます。何事もなかったように、以前のようでかまいません。パートナーにユキゲが戻ります。最後に、この事は他言は無用です」
「え?」
あまりにも予想外のことで、頭がついて行っていない。
てっきり、希を渡し消滅しろとでも言うのだと思った。
力が抜けて、握っていた希を落とすところだった。
「それは、どういう事ですか?」
「その質問には答える事はできません」
きっぱりと、機械的にヒナガは口にした拒否。
私は喜ぶできなのか、悲しむべきなのか、驚くべきなのか、怒るべきなのか、わからなかった。
そもそも、心がないのだからそんな感情はないのだけれど。
「サボった分、頑張ってくださいね。仕事は山ほどありますから」
ヒナガはいつものように、いかにも天使、もしくは聖女のように柔らかく微笑んだ。
その微笑みに、疑問が流されそうになった。
「わかりました。では、失礼します」
私が書斎を後にしようとヒナガに背を向けた。
以前のようにだって?何事もなかったように?どういう事?
「サヨ」
後ろから、慌てたような声が聞こえた。
ドアノブに手をかけたまま振り返ると、嬉しそうに微笑んでいるヒナガが私にゆっくり近づいてきた。
何が起こっているのか、起ころうとしているのかわからなかったから、私はそのまま突っ立ていた。
すると、ふわっと甘い花のにおいがしたと思ったら、細い腕が私の体に巻き付いた。
ヒナガに抱きしめられていると気づいた瞬間、顔がカァッと熱くなった。
恥ずかしいのか、嬉しいのか、戸惑っているのか。
「心配しました。本当によかった」
まるで、温かい日だまりにいるような気がして、体ごと意識ごと彼女に委ねて目を閉じてしまいたくなった。
でも、目を閉じた瞬間あの“日だまり”が見えてきた。
自分もあの人間の輪に入れると、あの世界で生きていけるのだと、心があるのだと思っていた、あの愚かだった時の記憶が…!
私は思わずヒナガを押しのけ、書斎から出て行った。
私はヒナガの書斎に呼ばれた。
彼女はいつもでは見ない、硬い顔をしていた。机の上で手を組んで、ジッと私を見据える。その目には、いつもの親しみやすさはなく、大天使としての光を宿していた。
「あなたには、これからも以前のように仕事をしてもらいます。何事もなかったように、以前のようでかまいません。パートナーにユキゲが戻ります。最後に、この事は他言は無用です」
「え?」
あまりにも予想外のことで、頭がついて行っていない。
てっきり、希を渡し消滅しろとでも言うのだと思った。
力が抜けて、握っていた希を落とすところだった。
「それは、どういう事ですか?」
「その質問には答える事はできません」
きっぱりと、機械的にヒナガは口にした拒否。
私は喜ぶできなのか、悲しむべきなのか、驚くべきなのか、怒るべきなのか、わからなかった。
そもそも、心がないのだからそんな感情はないのだけれど。
「サボった分、頑張ってくださいね。仕事は山ほどありますから」
ヒナガはいつものように、いかにも天使、もしくは聖女のように柔らかく微笑んだ。
その微笑みに、疑問が流されそうになった。
「わかりました。では、失礼します」
私が書斎を後にしようとヒナガに背を向けた。
以前のようにだって?何事もなかったように?どういう事?
「サヨ」
後ろから、慌てたような声が聞こえた。
ドアノブに手をかけたまま振り返ると、嬉しそうに微笑んでいるヒナガが私にゆっくり近づいてきた。
何が起こっているのか、起ころうとしているのかわからなかったから、私はそのまま突っ立ていた。
すると、ふわっと甘い花のにおいがしたと思ったら、細い腕が私の体に巻き付いた。
ヒナガに抱きしめられていると気づいた瞬間、顔がカァッと熱くなった。
恥ずかしいのか、嬉しいのか、戸惑っているのか。
「心配しました。本当によかった」
まるで、温かい日だまりにいるような気がして、体ごと意識ごと彼女に委ねて目を閉じてしまいたくなった。
でも、目を閉じた瞬間あの“日だまり”が見えてきた。
自分もあの人間の輪に入れると、あの世界で生きていけるのだと、心があるのだと思っていた、あの愚かだった時の記憶が…!
私は思わずヒナガを押しのけ、書斎から出て行った。