ブラッティ・エンジェル
 「天使だろ。」
サヨ達ご一行は、とある小さな喫茶店にいた。テーブルを挟んで向かい合うように座っている、
サヨと少年。
 少年は、興味津々に目を輝かせていた。サヨは、困惑とユキゲに対しての怒りの色を、顔ににじませていた。ユキゲはというと、テーブルの上でサヨにデコピンされた顔を赤くして、サヨに背を向けあぐらをかいていた。
「あまり、天使天使言わないでくれる。普通の人間には、人間に見えるんだから。」
「やっぱ、天使なんだ。」
少年が身を乗り出して聞いてくる。サヨは、視線をユキゲに落とす。怒っているのか、ユキゲはそっぽうを向いている。
 サヨはばれない程度に、ため息をつく。
「ええ。」  
本当、面倒なだけ。
 サヨは心の中で、悪態をつく。
「ねぇ天使さん。」
「サヨ。天使って言わないでって、いったでしょ。」
コーヒーが二つ、運ばれてきた。カチャカチャと乾いた音が響く。コーヒーのいい香りが、サヨのイライラした心を、少し癒す。
「あ。オレのぶんがねぇ!」
「見習いのくせに、生意気。」
サヨがぼそっと、呟く。それを聞き逃さなかったユキゲは、バッと立ち上がり、サヨの方を向く。
「サポートがなきゃ、なんも出来ねぇくせに。」
「サポートがなくても、やろうと思えば出来る。あんたこそ、私がいないと天使になれないくせに。」
うっと、ユキゲは不利になって呻く。サヨは勝ち誇った顔をして、ふふんと鼻で笑う。
「オレンジジュ」
「ミルクとプリン!」
少年の言葉を、不機嫌なユキゲの声が遮る。
「オレンジジュースはやめて、ミルクとプリン、追加で。あ、スプーン小さいのにしてください。子供サイズの。」
「オレはガキじゃねぇ!」
追加オーダーを受けたウェイトレスの女の子は、小走りで去っていった。
 ユキゲの叫びは、聞こえていない。普通の人間には、天使見習いの姿は見えない。
「こら、ユキゲ。ごめんなさい。お金、私が払うね。」
「いいよ。昨日、バイトで給料入ったから。あ、俺ここから二駅ぐらい先にある、HEARTって喫茶店でバイトしてんの。」
少年はバックからメモ帳とペンを取り出して、なにやら書き出す。
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