ブラッティ・エンジェル
「昔とかわんないねぇな」
「マスターは、少し老けましたね」
サヨは顔をあげ、悪戯っぽく微笑んで見せた。
 マスターは少し目尻を下げた。
「当たり前だろ。十年たちゃぁ、小6のガキだって成人迎えて、男連れてくんだ」
「それって、ゆずちゃんのこと?」
懐かしいなぁと思わず頬が緩んでしまう。
 あのふわふわ可愛い女の子が、どんな女性になったのか気になる。
 男を連れてくるあたりもすんごく気になる。
「ゆずちゃん、彼氏出来たんだぁ。どんな人?」
身を乗り出しているサヨの横にコーヒーを置いて、マスターは自分のコーヒーを持って椅子に座った。
「どんな奴だったかねぇ。もう別れて結構経つからなぁ」
「えー。別れちゃったの?ゆずちゃんかわいそう」
「そぉでもないと思うぞ」
別れたのに?可愛そうじゃないの?
 サヨの頭にはてなマークが飛び交った。
 そんなサヨをよそにマスターはコーヒーをすすりながら、何でもないようにいった。
「アイツがふったんだからな」
「なんで?」
 からんっからんっ
 サヨが目を丸くしたとたん、店のドアが開いた。
 サヨは緊張に支配されていく。
 うっすら明るい外の光を背にして、望が立っていた。
 肩を上下させているところをい見ると、急いできたんだろう。
< 64 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop