ブラッティ・エンジェル
晴れのち曇り、のち晴れ?
 サヨがHEARTで手伝いを初めてもう、一週間は経つ。
 ゆずとサヨは、昔のように仲良くおしゃべりしたり、ショッピングをしたり。
 まるで、ティーンエイジャーのようだった。
 お店のほうも、美人姉妹がいるという噂が広がり、客が増え、そこから、コーヒー、料理が美味しいと評判になった。隠れた名店ということで、ローカル番組に出た。
 美人姉妹とはもちろん、サヨとゆずのことだった。姉妹じゃないんだけど…。
 一緒に笑いあって、本当の姉妹みたいだった。
 この日までは…。
「手伝いに来ました~」
サヨがいつものように店の扉を開けると、お客がまず声をかけてくれる。
 そして、マスターがカウンターから手を振ってくれて、コーヒーを運んでる望がVサインをしてくれた。
 いつもならゆずが走って来てくれるのに、今日はゆずが走ってくることはなかった。
 あれ?と思い、カウンターのほうにサヨは向かう。
「マスター、今日はゆずちゃん来てないの?」
「いや、来てるよ。バイトの椛(もみじ)といたはずだ」
「もみじ?」
サヨの頭にハテナマークが飛び交う。
 そんな名前、聞いたことがなければ、他に働いていた人がいたなんて知らなかった。
「あぁ、サヨはあったことがなかったんだった。望の学校の後輩で、ここのバイト。ここ一週間ぐらい、おばあちゃんが亡くなったとかでいなかったんだよね」
「そうなんだ」
サヨはなぜだか、胸の辺りがもやもやしていい気分じゃなくなった。
 胸騒ぎなのだろうか。
「あってきたらどうよ?奥にいるはずだから」
「そうするよ」
サヨは少しマスターに微笑みかけて、店の奥に入っていった。
 
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