ブラッティ・エンジェル
 サヨの上で、ユキゲが歯ぎしりし、拳をふるわせていた。
 ユキゲは、一瞬でもサヨの言葉を信じてしまった自分と、目の前にいるサヨの姿をマネした悪魔を呪った。
「そう言うことだったんだ」
やっと理解したサヨは、それしか言葉に出来なかった。
「ばっかじゃないの?本当にあたしと仲直りできたと思ったの?昔と変わりないお人好し。
 あたしは一時だって、あなたを許してないわ。あなたなんて大ッ嫌い。二度と顔も見たくなければ、同じ空気だって吸いたくない。
 でも、黙って引き下がるのも腑に落ちないでしょ。だから、あなたから大事な望を取り上げてやったのよ。あたしから希を取り上げたように!」
「テメェ!」
怒りを抑えきれなくなり、ユキゲがゆずのほうへ飛ぶ。小さい体で出来る事なんてないのに、何かやらなければ気が済まない。
 ユキゲがゆずの肩にこん身の一撃を与えるが、今のゆずにはどこ吹く風だった。
「サヨがどんな気持ちかしらねぇくせに。サヨがどんな思いをしてきたかも。サヨが…」
ユキゲはゆずには聞こえない怒りをぶつける。
 サヨは、自分がどうしていいのかわからなかった。
 ユキゲみたいに怒りを全部ぶつければいいのか。それとも、思いっきり泣けばいいのか。土下座でも、首を落としてでも何でもして謝ればいいのか。
「はやく、消えなよ」
その言葉が、とどめだった。
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