ブラッティ・エンジェル
嵐の終わり
 HEARTにいかなくなってもうどれくらい経つだろう。
 セイメイとのデートはこれで何回目になるだろう。
 望といたときは、やけに時間が早く感じられたのに、今はやけに遅い。
 一日終えるのに、一ヶ月分の仕事を一日で終わらせたみたいに疲れる。
「ねぇ、今日はどこ行く?」
今日も顔に笑顔を貼り付ける。
 セイメイに悪いけれど、今は仮面をつけてふりをしなくてはいけない。
 そうしないと、バラバラに崩れてしまうような気がした。
 本意じゃないけど、セイメイがサヨの心の支えで傍にいなくてはならない存在。
 それが消えたら、サヨはどうなるんだろう…。
「サヨチャンは、どうしてボクと付き合ってるの?」
最近気に入っているアイス屋を見つけて、サヨがにこやかに指差そうとした瞬間の事だった。
 あまりにも衝撃的な言葉に、一瞬、頭が真っ白になってしまった。
「ほら、セイメイ。あのアイスクリーム屋さんだよ。買って~」
何も聞かなかったふり。とぼけたふり。何もなかったふり。
 最近、サヨにふりが増えてきた。
 サヨはいつものようにセイメイに腕に、自分の腕を絡ませて引っ張る。
 アイス屋の甘い香りが、フワッと漂ってくる。
 さっきのは、自分の聞き間違いにちがいないと、サヨは自分自身に言い聞かせた。
「ストロベリーと…」
「ボクはいいヨ」
「だけで」
アイスはすぐにできあがった。サヨとセイメイが話し始める前に。
 口に含むと、甘酸っぱい味が口にひろがって、ひんやりとした。ちょっと入っている果肉が、何とも言えない。
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