Death File
あの親の人たちはわたしを実の親から誘拐しておいて、わたしを実の娘かのように扱い、平然とよそおっていやがるが、わたしには嘘をつきとおすことなどできはしない。

なにしろ、最近は日中、起きている時でさえ、さらには部屋でヘッドフォンをして音楽を聴いている時でさえ親の人たちが話し合う声が聞こえてくるものだから、わたしに隠しごとをすることはできない。

実の親に対する恋慕はあるが、なにしろ親の人たちはどういう手段を用いてわたしを誘拐したのか知らないけれど、その手口は巧妙を極めていて20年間、わたしは親の人を実の親だと疑うことをしなかった。

そういったこともあり、実の親に対する恋慕はあるが、もう誰が実の親なのかわからないので実の親に対する恋慕は虚しくも、そしてはかなく消えてしまったのである。

すると、親の人たちに対する怒りや、憎しみはますます積もり、どうやって報復をしてやろうかという思いに辿りついてしまうのだが、わたしもその方法を考えるにも、なかなか良い名案が浮かばないで現在まで過ごしてしまっている。

自殺をしてみるというのもひとつのやり方なのだが、そもそも親の人たちは赤の他人であるわたしを誘拐してきて、今まで飼育をしてきたのだから、わたしが死んでしまっても親の人たちは悲しむことはないだろう。

せいぜい葬式をするのはちょっと困るなあという程度のことなのかもしれない。

親の人が困るのはわたしとしては大いに喜ばしいことで、誘拐という犯罪行為が社会に露見することは、ざまあみろという思いのほかならない。

親の人たちを困らせてやろうかと考えると思うようになったわたしだが、果たしてどうやって困らせてやろうかと考えると、少し考えこんでしまう。
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