60年後のラブレター
そう、なぜなら、死んだ妻とは結婚式をしていなかったからである。結婚式はせず籍を入れただけであった。情けないことに、私には、当時、お金が余りなかった。まぁ、簡単な話貧乏だった。しかし、私と死んだ妻は、愛し合っていた。本当に。その誓いの印というのも、おかしな事なんだが、当時の私は、欲しかった。結婚式は、資金がたまり次第あげようとしたのだが、その途中に神様からこどもを授かりました。当時の僕は、結婚式をあげようと妻に言ったが、妻は、溜まった結婚資金は子供のためにとっておくと言いだした。妻は、頑固なところがあり、一度言いだすと聞かなかった。僕が、説得しても、それならば、私、離婚するとか言いだしたりしたのであった。ただ、言葉ではそう、言っているが、本心はしたいと思っていたに違いない。ただ、家の家計簿の問題であっただけで、
素直になれなかったのだろう。しかし、その日から、当時の僕は、一生懸命にお小遣いを少しずつ、貯金をしていた。妻には内緒で、毎月一万円ずつ、貯金をしていた。そう結婚資金を貯めていた。しかし、その夢が叶わなかった。叶うことが二度とできなくなってしまった。ただ、私が妻の元に行った時は、結婚式を挙げたいな。
娘たちの結婚式も無事に終わり、娘は私の場所から旅立った。寂しいと言われれば、寂しいが、正直、安心した感じがある。終わった感じもあるね。これなら妻に会っても、文句は言われないと思うな。会いたいな。妻に、一目でいいから、会いたいな。
その日、私は夢を見た。そこには、草原があり、動物たちがたくさんいた。犬や猫、像やキリン、ライオンやトラ、サイやイノシシ、他にもたくさんの動物たちがいた。そして、白いウエディングドレスを着た。妻がいた。
私は妻の元に駆け寄った。年老いた体で。しかし、不思議な現象が起こった。妻の元に駆け寄っている内に、体が40代、30代、20代と若返っていった。
「おーい」
僕は手を振りながら、妻の元に駆け寄った。服装もいつのまにか結婚式のタキシードになっていた。
「おーい、おーい」
全速力で駆け寄った。
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