60年後のラブレター
ちなみに、その会社は20年後、摘発され倒産していた。嫌いだった上司とは、二度と会うことがないと思っていたが、僕が50歳の頃、ニュースで見かけた。殺人犯になっていた。まぁ、それはさておき、辞めた後は、僕は彷徨っていた。酒と女とギャンブルにはまっていた。朝はパチンコを打って、昼は酒を飲み、夜は女を抱いていた。ただ。心の隙間を埋めたかっただけなのかもしれない。
よくうさぎは寂しくて死んじゃうという言葉を聞いたことがあるだろう。まさに自分がその通りであった。来る日も来る日も僕は繰り返していた。ただ、ある日僕は、家を掃除していた。その時に、手紙を見つけた。
小学校の時の未来の自分に書いた手紙であった。それを見たら、僕は涙が溢れていた。内容は、がんばれ、がんばれ、みんなが見てなくても僕が見ている。短い文章であったが、僕には走馬灯のように、僕の細胞たちを奮いたたせた。
他人が見ても、なんだそれとか、価値がないなど、さまざまな意見があると思う。ましてや、他人には心に響かないかもしれないが、僕の心には響いた。
昔の自分に感謝した。僕はハローワークに通い始めた。それから、何度も何度も面接に落ちた。だが、僕はあきらめなかった。あきらめそうやくじけそうになるたびに僕は手紙の言葉を思い出していた。そして、24回目のとある会社でようやく受かることができた。本当にうれしかった。人生には正直にいうと挫折なんかは味わらない方がいいに決まっている。
会社を辞めたことない人間には分からないと思う。ただ、その人達はすごいと思う。だが、働いていない人間や辞めた人間の気持は分からない。そして僕はようやく再スタートをきることになった。
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