60年後のラブレター
第2章 思い出
「やっぱり」
スッキリした。本当にスッキリした。このスッキリ感を例えるなら、そうだなぁ、小学校の時の事だが、割り算のしている時の話なんだが、僕はその時に分数というものを知らなかった。だから10÷3=3.333・・・が永久に続いて、どこまで書けばいいんだといつも考えていた。そんなある日、僕は分数と出会ったんだ。10÷3=三と三分の一と言い切る事ができたんだ。これはスッキリだと僕は感心をしていたんだ。それと似ている。まぁ、関係ないけどね。
僕は、写真を見てピンときた。写真だけに。
今日は冴えているなと僕は感心をしていた。自分に。実は、初恋の人にそっくりなんだ。ただ、本人と違うことは知っている。
それはね、24歳のころに会社を辞めて、すぐの話なんだけど、地元に一度帰ったんだ。ひっそりね。こそこそしながら。
まるで泥棒見たいね。心の弱さだと思うね。仕事をしていないことでプライドが許さなかったんだと思う。仕事をしている事で世間様が普通の目線で見てくれていると自分で考えていたんだと思う。
自分はプーですという姿を誰にも見せたくなかったんだと。たぶん、一生暮らせる金さえあれば、プーであろうとなんであろうがこそこそとしなかっただろう。所詮この世は金しだいでどうにかなる。金さえあれば欲しいものは手に入る。女だろうが権力だろうが。今の世の中なら手に入る確実に。まぁそれはいいとして、その頃の僕はひねくれていた。一つは仕事をしていないから、でもう一つの方は、初恋の人がもうすでに結婚していることを知ったからである。絶望という言葉が心に染みていた。分かる人なら分かるはずだ、愛している人が手に入らなかった。これがどれだけつらいことか、後悔という言葉が頭の中に埋め込まれていた。なぜ、あの時、僕はラブレターを渡さなかったのか、今になってまた苦い思い出が蘇ってきた。考えたくないんだ、もしもの話なんて、もしあの時勇気があってラブレターを彼女に渡していれば、もしかしたら付き合っていたかもしれないとか、結婚していかも知れないとは考えたらきりがない。一生後悔し続けることは分かっていたのに、あーくそ、くそったれ。ふざけんなよ、ばっきゃやろう、ただ、心の中でしか言うことができない自分を情けなく思うしかできなかった。
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