オレんちの兄さん2
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オレの誕生日を間近に控えたある日の夕食時。
「アサヒ、もうすぐ誕生日だな」
仕事が一段落した兄さんと久しぶりに一緒に食事をしていると、毎年の如く兄さんが切り出してきた。
「うん…そうだね」
オレは返事をして、次に来る兄さんのセリフを頭の中で再生した。
その再生とほぼ同時に、兄さんの口が動く。
「今年でいくつになるんだ?」
「15だよ」
オレ普通に中3なんだから聞くなよ、と今年も思う。
「早いなぁ。アサヒも15かぁ」
「来年は16で再来年は17だよ」
「ははは、そりゃそうだ」
兄さんは笑う。
けど。
毎年恒例のこの会話、オレが笑わなくなったのはいつからだろうか、なんてことを考えていた。
考えながら、兄さんの次のセリフを待っていると、
「15になるアサヒは何が欲しい?」
オレの耳に届いたのは台本には載ってないセリフ。
オレは食事の手を止め兄さんを見た。
オレを見ていた兄さんと視線がぶつかって、そのあまりの造形美に不覚にもドキッとする。
「どうしたんだよ、アサヒ。
“はとまめ”みたいな顔して」
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