オレんちの兄さん2
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「あ〜、腹減ったぁ」
「うるせぇなぁ。
さっきから何回目だよ」
「裕也は腹減らねえのかよ」
「減ってっけど言ったって仕方ねぇだろ」
「そーだけどよぉ……」
誕生日を前日に控えた、土曜日の部活帰り。
オレは太一と裕也と一緒に駅前を歩いていた。
「なぁ、ラーメン食いに行こうぜー」
腹が減ったとうるさい太一に、
「金ねぇ。
それ以前にめんどくせぇ」
裕也は無情に言い放つ。
裕也はオレと太一の部活仲間で、クラスメートでもある。
オレ達が入っているのは剣道部。
別に兄さんが入ってたからオレも、ってわけじゃない。
断じて、そんなんじゃない。
ただ、興味があったからなんとなく入部したら、案外楽しかったから今まで続けてきただけだ。
しかも、中3になった途端、部長に任命されてしまった。
オレより裕也の方が頭もキレるし、同じくらいの強さなのに……
奴が極度のめんどくさがりという理由で、部長はオレに決定した。
因みに太一は遅刻魔だから論外だ。
「あ、山本がいる」
「……誰だよ、それ」
「えー!お前、もう忘れたのかよ!?」
「やっぱモテる奴は違うな」
二人から羨望の眼差しが降り注がれているが、オレには何のことだかさっぱりだ。
大体、山本って誰だよ。
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