オレんちの兄さん2
「ほら、そこにいるだろ!」
そう言って太一が指さした方を見る。
本屋の中には、うちの中学の制服を着た、見覚えのある女子生徒が一人。
彼女はなにやら真剣な眼差しで、参考書の棚の前に立っていた。
「……あぁ」
思い出した。
アイツ、数日前にオレに告白してきた奴だ。
「山本っていうのか」
「そんなことも知らなかったのかよ!」
「最低だな、オマエ」
「……なに軽く引いてんだよ、お前ら」
知る訳ねぇだろ、そんなん。
聞いたのかもしんねぇけど、一回しか話したことない奴の名前なんて、覚えてられねーよ。
しかも、一方的に話しかけられただけなら尚更だ。
聞いた話では、うちの学校のマドンナ的存在らしいが……
そんなこと、オレの知ったこっちゃない。
「なんで付き合わなかったんだよ?
あんなに可愛い子、なかなかいないぜ?」
裕也がオレの横で、勿体無いだの何だのとブツブツ嘆いている。
「あ!もしかして本命がいるとか?」
「……そんなんじゃねぇよ。
ただ、興味ねぇだけだし」
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