オレんちの兄さん2
「わかった!」
至近距離で大声を出す太一に、オレは顔を歪めた。
「今度は何だよ?」
「彼女ができたら兄ちゃんが悲しむと思って、毎回告られても断ってんだな!?」
「ぶふっ!!」
(どんな理由だよ、それ!!)
そうツッコもうと思ったが、強ち間違ってはいないので、止めた。
別に、兄さんのために我慢してるとかじゃないけど……
その“山本”とかいう奴に告白された時、兄さんの嬉しそうな顔が頭に浮かんだんだ。
―――アサヒがいないと俺、寂しくて死んじゃうかも。
―――彼女いないんだなーと思ってさ。
(……………)
兄さんがオレにこんなこと言うなんて、太一達に知れたらどうなるか……。
「クク、アサヒの兄ちゃんどんだけブラコンなんだよっ」
腹を抱えて笑っている裕也。
その横で、太一も何やらニヤニヤしている。
「所詮お前も兄ちゃんと同じだな」
「オレはブラコンじゃねぇ!」
額から流れる冷や汗をタオルで拭い、オレは足早に本屋に向かった。
「おい、今行くのはさすがに気まずくねーか?」
「……なんでだよ」
「いや、だってまだ山本が……」
やっと笑いが収まった裕也が、眉間に皺を寄せてオレを引き止める。
「そんなこと知るかよ。
オレは参考書を見に来たんだ」
お構い無しに再び歩き始めるオレを、
「おい、アサヒ!」
今度は太一が引き止める。
「何だよ、うるせぇな」
「あそこにいるの、アサヒの兄ちゃんじゃね?」
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