オレんちの兄さん2
オレは抱えていたクッションをボフッと鈍い音を立ててソファーに置くと、兄さんの顔を見ないように横を通り過ぎようとした。
今は一刻も早く、兄さんから離れたかったから。
――――――ところが。
「アサヒ、待ちなさい」
通り過ぎようとしたオレの腕を、兄さんがやんわりと掴む。
「どうした?
何を怒ってるんだ?」
わざと背けた顔を覗き込むようにして、優しく問いかけてくる兄さん。
でも、それがますますオレの苛々を煽った。
オレはキッと兄さんを睨み上げ、
「何も怒ってねぇし!
風呂行くから離せよ!!」
腕を掴む兄さんの手を乱暴に振り解いた。
そのオレの行為に、兄さんの表情が曇る。
「アサヒ……?」
オレを悲しそうに見下ろす兄さんの視線を断ち切って、わざと足音を立てながら風呂場へ向かった。
「オレのカレーは?」
背中にかかる兄さんの声に、
(自分でしろ、バーカ!)
と、オレは心の中で叫んだ。
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