オレんちの兄さん2
4
吐き捨てた声は程なく静まり、浴室内にはサーッとシャワーの音だけが響いている。
その静けさにオレは孤独感を掻き立てられ、鼻の奥にツンと涙の欠片を感じた。
扉の向こうからは、物音一つ聞こえない。
兄さんはもう、居間に戻ったのだろうか。
オレは湯船に浸かろうと、シャワーの栓に手を伸ばした。
――――――――その時。
カシャン。
扉の開く音。
驚いて扉の方を見ると、兄さんがツカツカと入ってきていた。
しかも、服を着たままで。
「ちょっ!?何入って来てんだよ!?」
驚いたことで、鼻の奥にツンと感じた涙は波が引くように消えていった。
その消えた涙と引き換えに顔を出したのは小さな怒り。
「そのズボン、クリーニング返ってきたばっかだろ!
何やってんだよ!!」
が、オレのそんな主婦的な怒りなんか気にも止めないで、兄さんはオレに近付いてきた。
そして……
「何を勘違いしてるんだ、アサヒは」
そう言ってシャワーの下にいるオレの顔を、両手で包み込んだ。
兄さんにも容赦なくシャワーがかかる。
髪が、顔が、Yシャツが、濡れて……。
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