オレんちの兄さん2



「だ……っ」

「ん?どうした、アサヒ?」

「誰と、一緒にいた、の?」

「拓海さんの奥さん。
 マドカさんだよ。
 アサヒも会ったことあるだろ?」




拓海さんに、その奥さん……。

オレは混乱する頭の中で、必死に記憶を辿った。


その辿った記憶の行き着いた先は、兄さんと一緒に参加した花見会。




「……花見会の人?」

今年の春、兄さんの会社の花見会で、「もうすぐ結婚するんだ」と拓海さんに紹介された人……。


「そうかな?」

兄さんがニコッと笑う。






兄さんから聞いた話によると、外回りをしている時に偶然出会い、断る間もなく店内に引っ張り込まれたとか。

で、聞かされたのは夫である拓海さんへの不平不満。

お洒落な店に似つかわしくない内容と、最初は絶対アサヒと来ようと決めていたのにそれが出来なかった悔しさとで愛想笑いしかできなかったよ、と兄さんは言った。




「それに、アサヒがいるのに恋人なんか作ってる場合じゃないだろ☆」




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