オレんちの兄さん2
「うーん……
言われなかったと思うけど。」
兄さんの返事に、オレはひとまずホッとする。
とりあえず、最悪の事態は免れたようだ。
「にしても一ヶ月って……
そんなに休んで大丈夫なの?」
学生じゃあるまいし、一会社員がそんなに長い休みを取れるなんて、普通はあり得ない。
兄さんの会社って、仕事なさすぎて倒産寸前……とかじゃないよな、まさか。
「この前、飲み会に行ったの覚えてるか?」
「?……あぁ、あの時の」
鍵がないとかなんとかで、翌朝ドアを開けたら兄さんが座り込んでたんだよな。
結局、鍵はズボンのポケットに入ってたんだけど。
ホント、人騒がせな兄貴だ。
「その時、家族の話になってさ。
俺、ここ最近ずっと働き詰めだっただろ?
弟と二人で生活してるって言ったら、長期休暇あげるからたまには弟と遊んでやれって、課長が」
「遊んでやれ」って……
オレはその課長とやらに、いくつだと思われてるんだ。
もう、「一人で家にいるのが寂しい」なんて思う年頃でもないのに。
小さくため息を吐くと、それに気づいた兄さんが切なげな表情でオレを見た。
「なんだよアサヒ、嬉しくないのか?」
「そういうわけじゃ「あ!もしかして彼女がいるとか!!」
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