LLE <短>
それでも、グラウンドが一望できる教室の窓からは、今日も、茶色い地面の上を走り回る先輩がいる。
どんなに小さくても、その姿をあたしの目は、すぐにとらえてしまう。
知らないうちに、心が探してしまっている。
あたしの心の中だけに住むキモチ。
一方通行の想い。
だけど、どんどんと膨らむばかりの、恋心……
どこにも行き場がなくて、
それでも手放せなくて。
持て余しては、大切に抱え続けるしかない日々。
そんな哀傷で、心が押し潰されそうになっていた、ある日だった。
「ねぇ、君。サッカースキなの?」
あたしの目の前にいたのは、先輩だった。
幾日もの時の中、数え切れないほどに恋焦がれた、先輩だった。
窓ガラスの向こう側に立って、教室の中にいるあたしを、先輩が見ていた。
「え、えっと……」
惑うばかりのあたしに、いつも遠くで見ていた笑顔そのままに、先輩は言葉を続けた。
「そんなとこでいつも見てないでさ、もっと近くに来なよ」
「え……」
「スキなんでしょ?サッカー。だったら、俺らのマネージャーになってよ」