LLE <短>
どんなカタチでも、あたしという存在を、先輩が知ってくれていたっていう、紛れもない事実。
それだけで、空も飛べちゃえそうなくらい、なんだってできてしまえそうな……
そんなバカげた錯覚に陥っちゃうほど、おっきなおっきな出来事だった。
この日は、あたしにとって、誕生日よりもクリスマスよりも、
ずっとずっと大事な、宝物の記念日になった。
多分この恋は、あの春の日に偶然落っこちちゃっただけの、落とし穴だったんだと思う。
だけど、あたしはもう、這い上がることはできなくて。
今はもう、そこから抜け出す気も、なくて。
あたしは、息を呑んで踏み出した。
近寄ってみたら、もっともっとスキになっていた。
この先、二人だけで刻める未来はなくたって、
二人が、同じ空間で笑い合う、あたしだけが記憶に記すだけの未来だけしかなくたって……
別に、構わない。
それでもあたしは、先輩の傍にいたい。
許されるのなら。
……できるだけ。
あたしの心を、そのまま映し出したような、真っ赤に熟れた葉っぱを見つめながら、
強くもないクセに、そんなことを本気で考えた。
気まぐれに差し出された先輩の手を取って、
何かを掴みたくて、手を伸ばした、秋――