LLE <短>
今にも空から白い粉が舞い降りてきそうな、澄んだ空気。
だけど、見上げた空は雲ひとつなくて……
吸い込まれそうなほど、透明な色をしていた、冬の空。
あたしは先輩に、うんと近付いていた。
そんな時、あたしの元に舞い込んできた、突然の知らせ。
先輩が、彼女にフラれちゃったっていう、福音。
……あたしにとっては、だけど。
あの夏、先輩と寄り添うように歩いていた彼女は……
先輩に優しく触れられていた黒髪の彼女は、もうこれから、先輩の隣にはいない。
「サッカーばっかやって、ほったらかしにするからだぞ」
「うっせーよ」
仲間にからかわれながら、どうってことなさそうな顔をして、笑い話にしていた先輩だけど、
彼女にもらった手作りのお守りを、試合の日、大事そうに握り締めていたのを、あたしは知っていた。
そんな先輩の張り詰めたような横顔に、いつもと違う心の一部が、ちょっとだけ痛んだけど、
それでもやっぱり、素直に“嬉しい”ってキモチは隠せない。
あたしにもチャンスがあるかも――って。
密かに期待を膨らませてたことは、先輩には言えない。
ね、先輩。
あたしだったら、どんなにほったらかしにされたって、大丈夫だよ。
構ってくれなくたって、我慢するよ。
誰よりも自信あるよ。
だって、サッカーしてる時の先輩が、あたしは一番スキだし、
無条件で傍にいられる権利をもらえるだけでもう、最高にシアワセだもん。