LLE <短>
でも、あたしはわかってた。
せっかくおとずれたチャンスも、何もしないで眺めてたら、それはずっと、ただのチャンスのまんま。
そのままの変わらないカタチで、通り過ぎていっちゃうんだってこと。
あの秋、先輩から目の前に差し出されたチャンスを、あたしはただ、掴んだだけだった。
だけど、それだけじゃ足りない。
ただ待ってるだけじゃ、
大切にしまっておくだけじゃ、何も起こってはくれないんだ。
その先へは続かない。
一歩踏み出さなきゃ。
チャンスを、チャレンジに変えていかなきゃ――
「先輩!」
あたしは進む。
遥か前に立つ、先輩の背中に向かって。
……先輩だけを見つめて。
「どうした?」
――先輩。
先輩――
「スキ!」
――ダイスキ。
「……え?」
かじかんだ足で駆け出した、冬――