LLE <短>
to challenge
「せーんぱいっ!」
「何しに来たんだよ」
テッペンにいた太陽も降りてきて、涼しい風の吹き抜ける、放課後のグラウンド。
あたしの足は、やっぱり今日も、先輩目がけて一直線。
「何って、あたしサッカー部のマネージャーですから」
「ふーん。あっそ」
「もう!忘れたんですか。先輩が誘ってくれたんですからね!」
先輩は、いくらムスッとした顔をしたって、絶対に、あたしのことを無視したりしない。
「はぁ……お前を誘った俺がバカだったよ」
「何がですか?」
ため息交じりで、カタチのいい目を細める先輩に、あたしはワザと首を傾げて、惚けてみせる。
「熱心なサッカーファンだと思ってたのにな……ったく。スッカリ騙されたよ」
「あたし、熱心なサッカーファンですよ?“先輩のする”サッカーのファンだもーん」
「はいはい」
本日数回目となる愛の告白も、意識半ばで、適当に流されて、
先輩は、広いグラウンドの真ん中に走り去っていってしまう。
あたしの一番は、言うまでもなく先輩。
だけど、先輩の一番は、相も変わらずサッカーだ。
伸ばした手は、まだまだ当分、届きそうもない。
あぁ……
遠いなぁ。
こんなにも遠い。
遠いよ、先輩――