LLE <短>
「はい!先輩タオル」
「おぉ、サンキュ」
練習の休憩時間。
あたしは、一息つく先輩の隣に、すかさず駆け寄る。
「あぁ、いいなぁ~」
「何が?」
自転車をひきながら、並んで校門から出ていくカップルの姿を、
あたしは、フェンスの向こうに見つけて、呟く。
「先輩。あたし、夢なんだ」
「は?」
「ウチの学校って、スポーツとか勉強とか、忙しい人多いじゃん。だからあんまりユックリする時間ないでしょ?」
「だから何だよ」
先輩は、不思議そうに問いかける。
「学校から駅ってさ、自転車乗っちゃったら10分で着いちゃうじゃん。でも、歩いたら30分」
「そうだな」
「あたしは、10分の道のりを30分かけて歩けるような……そんな二人になりたいんだ」
ほんの少しの時間も大切にできる。
……そんな二人に。
「んなもん、疲れるだけだろ」
「先輩ヒドイー!」
あたしの些細な夢も、先輩の一言に、いとも簡単に弾き飛ばされる。
それから、小さく笑って、続ける。
「でも、お前っぽいな」
「あ、またバカにしてるでしょー!」
「まぁ、お前だからな」
「もーう……」
先輩、わかってる?
あたしは、先輩とそうなりたいんだからね。