LLE <短>
「だから、何度も言わすなって」
「だって……ホントにホントにホント!?」
「じゃあ、ウソ」
「えーーーー!」
「ウソだよ、アホ」
先輩は呆れ顔で、今度はあたしのほっぺたを両側から、思い切り引っ張った。
「いひゃいよ、しぇんぱい~」
「何言ってるかわりませ~ん」
痛みのおかげで、これが夢じゃないって知る。
「お前ニヤけすぎ。キモイぞ」
「イテッ」
そう言って、手を放した後、またあたしはデコピンをくらわれた。
心なしか、さっきよりも強くなっていた。
だけどやっぱり、痛くても、ニヤニヤは止まらない。
「だってぇ、嬉しいんだも~ん」
先輩の耳も、ほんのちょっとだけ赤らんでいたことに気付いて、またさらに、嬉しさは増した。
……と思ってたら、あたしは目に違和感を覚えていた。
「ちょ、おい。泣くなよ」
「だってぇ……」
そう言って先輩は、あたしの目が溢れさせた涙を、ぶっきらぼうな仕草で、ゴシゴシと擦ってくれた。
……もう。
痛いよ、先輩。
だけど、嬉しいよ。
嬉しすぎるよ。
シアワセすぎる時も、涙って登場するものなんだって、初めて知った。
涙に色があったなら、今は絶対にピンク色をしていると思う。
ね、先輩。
このキモチは、先輩がくれんだよ。