LLE <短>



「ったく。怒ったり笑ったり泣いたり……忙しいヤツだな、お前は」

「だって、先輩がからかったりするから」



あたしはいつだって、いっぱいいっぱいなんだよ。


先輩の言葉ひとつで、上がったり下がったりできちゃうんだから。



「お前といると飽きないよ」



その一言で、瞬く間に、あたしの顔へと一気に熱が集まって、紅潮していくのがわった。


ほらね、先輩。

先輩の言葉は、こんなにもスゴイ力を持ってるんだよ。



「ぷっ――」

「何で笑うんですかー!」

「やっぱいいな、お前は。わかりやすくて」

「何それー」

「褒めてるんだよ」



この先は、ずっとラブラブで、最高にシアワセな毎日が待ってると思ってた。



あたしはずっと、先輩の一番近くにいられて

先輩の一番もあたしになって……


だからもう、悲しいことも、苦しいことも、切ないことも、二度と味わうことはないんだって。


そう、思ってた。



「せんぱーい」

「ん?」

「スキぃ」

「知ってる」



あたしは忘れていた。

ハッピーエンドで終わる、少女マンガの物語の主人公には、ちゃんとその先もあるんだってことを――

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