LLE <短>
太陽が、目の前の地平線に降りてきて、空も雲も、オレンジ色に染まる、夕暮れの終わり。
あたしは、先輩を待ち続けていた。
傍にいると邪魔になりそうだし、また帰れって言われてしまうだろうから、
あたしは、久しぶりに教室の窓から、先輩の姿を眺めていた。
なんだか、あの頃に戻ったみたいだ。
不思議だなぁ。
こうしていると、結局あれから、何も変わっていないみたいな……
そんな悲しい錯覚に、心を持っていかれそうになる。
時計の針は進んで、あたしたちが刻む時間も、ずっと前に進んだはずなのに。
「先輩、お疲れ様」
「待ってたのか?」
「うん!……迷惑だった?」
「……そんなことないよ」
少しの間を置いて返事を返した先輩は、相変わらずの優しい微笑みで、あたしの頭を撫でる。
それだけで、あたしの胸は飛び跳ねた。
でもね、先輩。
どうして今、一瞬止まったの?
“そんなことない”ってすぐに答えてくれなかったの?
余計なことは、考えないようにしたいのに。
先輩が隣にいることだけのシアワセに浸りたいのに。
あたしは、そんなことばかりに、つい意識を持っていかれて、上の空で、自転車に乗り込んでいた。
「乗ってくのか?」
「……え?」