LLE <短>



後ろから問いかける先輩の言葉の意味がよくわからなくて、あたしは聞き返す。



「だってお前、夢だったって言ってたじゃん」

「へ!?」

「駅までの10分間の道のりを、二人で自転車ひいて30分かけて歩いて帰るのが夢だって。前にそう言ってただろ」

「……」



ウソ――

覚えててくれたんだ。



あの時は、先輩、わけわかんないって顔して、バカにしてたじゃん。


疲れるだけだって、相手にしてくれなかったじゃん。



……ズルイよ、先輩。


こんなとこばっかり、優しくて。



不意打ちの優しさは、かえってあたしを切なくさせる。



突き放すなら、とことん突き放してよ。

ほったらかすなら、中途半端に構わないで。



練習でクタクタに疲れてるクセに。


そうしたいのは、あたしだけのはずなのに……



これは、あたしだけの夢で、

あたしだけの願いだっていうのに。



それだから、あたしは……

先輩から、離れられないんだよ――

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