LLE <短>



願掛けするようなキモチだった。



これを聞いてしまったら、何かが変わってしまうことがわかっていた。


ギリギリで踏ん張っている、あたしの心のバランスが、崩れてしまうことも、わかっていた。



だけどこれは、あたしのありったけの勇気を振り絞って言った、最後の賭けだった。



「……は!?なんだよ、イキナリ」

「あたしは、スキだよ」

「アホか。んなこと知ってる」

「ダイスキだよ」

「わかってるって」



余裕の笑顔。

あたしの愛の言葉なんて、聞き飽きて、もう今さらなんとも思わないんだよね。


でもね、先輩。

あたしは違うんだよ。



「ねぇ、先輩は?」



だけど、あたしは聞かせてほしい。


たとえ、ウソでもいいから。

出まかせでもいいから。



ただ、先輩の口から。

先輩の声で。


サッカーがスキだって言ってるような、いつもの軽い口調で、あたしをスキだって。

……そう、言ってよ。



そしたらまた、あたしはパワー充電して、頑張れると思うから。



だけど、きっと……

きっと、先輩は――



「アホか。んなこと、お前みたいにペラペラ言えるかよ」



――聞かせてはくれないんだ。



「スキ。あたしは先輩のこと、ダイスキだよ」

「だからなぁ……って、お前――」

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