LLE <短>



「最近どうしたの?」

「え?」

「ハルナちゃん、部活にも顔出さないし、コウにも会いに来ないじゃん」

「……」



何も答えられなくなったあたしは、俯く。



「ま、いっか。それより、今週の日曜日、決勝なんだ。よかったら見に来てよ」

「……」



タツヤ先輩は、黙り込んでしまったあたしを問い詰めることはせず、

部活に来ないことを一切咎めることもなく、一言だけ付け加えた。



「コウも、頑張ってるからさ」



“コウ”という、こんな簡単なたった二文字で、あたしの胸は、

もう、消えてなくなっちゃいそうになるくらいに締め付けられる。



「タツヤ先輩!あの……」

「会場ここだから。じゃあ、またね」



そう言い残して、タツヤ先輩は身をひるがえすと、ヒラヒラと手を振って、背を向けていった。



引退をかけた県予選が始まって、近頃の先輩の頭の中は、ますますサッカーでいっぱいなんだと思う。


あたしなんかのことなんて、当たり前に、頭の隅っこにも置いてもらえてないんだって思ったら、

限りなく、悲しみに近いキモチになった。



だけどそれは、もう今さら、どうしようもないことだと、どこかで諦めている自分もいた。


だけど、それがまた、悲しくもなった。


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