LLE <短>



先輩に会いたい。

だけど、会っちゃダメ。


それでも会いたい――



それからのあたしの一週間は、そんな葛藤との戦いだった。



昨日の晩も、今日の朝も玄関の前で、迷って迷って。

校門の前でも、怖気づいて後ずさったりして……



やっとのことで、辿り着いたグラウンド。


往生際の悪いあたしは、それでもまだ、迷いが消えていなかった。



「ハルナちゃん!」



そんな戸惑いを吹き飛ばすような声が、あたしを呼ぶ。


声の方を見やると、あたしの存在に気付いて、大きく手を振るタツヤ先輩がいた。



あたしは、タツヤ先輩に小さく一礼すると、先輩の目に触れてしまわないうちにと、

グラウンドの隅から、隠れるように入って、ギャラリーの中へと紛れた。



まぁ……

どうせ気付いていたって、先輩は気にも留めてくれないんだろうけど。



だけど、あたしの目は、やっぱり反射みたいに、先輩の姿を探しちゃってる。



久しぶりに見る先輩は、いつになく真剣な顔をしていて、

中心にいるにも関わらず、周りのざわめきとは、まるで遮断された場所にいるようだった。


意識してばっかりの自分が、恥ずかしくなるくらい……

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