LLE <短>



得点票が示す数字は、同じ数が並んでいた。


先輩は、大きく息を弾ませながら、がむしゃらにボールだけを見て

あたしの前を、行ったり来たりと繰り返す。



緊迫したムードに、見ているだけのコッチまで、息が詰まる。


だけど、歓声とどよめきの繰り返しの中、

絶え絶えの息から覗く先輩の瞳は、始まりから何も変わっていなかった。



泥まみれの先輩。


先輩の顔に光っているのは、雨なのか、汗なのか。

ぐちゃぐちゃになっているのに、相変わらずカッコよくて、悔しい。



先輩が、ボールを持つたび、パスするたび、シュートを放つたび、滑り込んで相手に向かっていくたび……


先輩の匂いが染み付いた真っ白なタオルを、強く強く握り締めて、あたしは歯を食いしばる。



頑張れ、先輩。


……頑張れ。



頑張れ――



ひたすら祈ることしかできない、無力なあたし。

声を出して、応援することすらできない、無意味なあたしの存在。


それでもあたしは、強く願い続けた。

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