LLE <短>
試合終了の合図が、グラウンド中に知らされる。
長い長い、10分間だった。
いつのまにか、降り出した雨は、上がっていた。
遠くに見えた先輩は、泣いているような気がした。
そんな独特の雰囲気の中で、あたしも泣きそうになったけど、
先輩を見ていたら、不思議と涙は出てこなかった。
もしかしたら、もうあたしの涙は、とっくに枯れてしまったのかもしれないとも思ったけれど。
雨上がりの空には、うっすらと虹が架かっているように見えたけど、
先輩を見つめてから、もう一度空を見上げたら、跡形もなく消えていた。
あたしは、まだまだ興奮冷めやらぬ、雨上がりの澄んだ空気の中で
こっそり群集から抜け出して、グラウンドを後にする。
何かに酔ってしまったかのように、おぼつかない不確かな足取りで、
あたしは、グラウンドの隣に並べられた、自転車小屋へと向かった。
不規則でせわしないリズムを刻む鼓動と、
それを加速させるかのように、いろんな想いが、波のようにあたしの心へと押し寄せる。
それは、あたしの心を強く圧迫してくるものだから、
心が押し潰されそうになって、苦しくて、痛かった。
……先輩。
傍にいても、遠くで見つめているだけでも、
先輩を想うだけで、こんなにも切ないよ――