LLE <短>



試合終了の合図が、グラウンド中に知らされる。


長い長い、10分間だった。

いつのまにか、降り出した雨は、上がっていた。



遠くに見えた先輩は、泣いているような気がした。


そんな独特の雰囲気の中で、あたしも泣きそうになったけど、

先輩を見ていたら、不思議と涙は出てこなかった。



もしかしたら、もうあたしの涙は、とっくに枯れてしまったのかもしれないとも思ったけれど。



雨上がりの空には、うっすらと虹が架かっているように見えたけど、

先輩を見つめてから、もう一度空を見上げたら、跡形もなく消えていた。



あたしは、まだまだ興奮冷めやらぬ、雨上がりの澄んだ空気の中で

こっそり群集から抜け出して、グラウンドを後にする。



何かに酔ってしまったかのように、おぼつかない不確かな足取りで、

あたしは、グラウンドの隣に並べられた、自転車小屋へと向かった。



不規則でせわしないリズムを刻む鼓動と、

それを加速させるかのように、いろんな想いが、波のようにあたしの心へと押し寄せる。


それは、あたしの心を強く圧迫してくるものだから、

心が押し潰されそうになって、苦しくて、痛かった。



……先輩。


傍にいても、遠くで見つめているだけでも、

先輩を想うだけで、こんなにも切ないよ――

< 38 / 51 >

この作品をシェア

pagetop