LLE <短>



先輩。

あたし、本当に喜んでるんだよ。



いつもいつも、サッカーには負けっぱなしで、悔しかったけど、

やっぱりあたしは、サッカーをしてる先輩が誰よりも、何よりも、ダイスキなんだって。


今さらだけど、今日また、改めて思い知ったから。



それっきり、先輩は随分コワい顔をして、黙り込んでしまった。


小さな風の音さえ聴こえてきそうなほど、静かで漂うような時間が続く。



あたしは、なんとか話を繋ごうと思ったけど、またあの日のように、言葉が浮かんでこなかった。


それに、先輩のいつもと違う雰囲気に、どうしたらいいのかも、わからなかった。



「ハルナ」



沈黙を割って、ようやく口を開いた先輩から発せられた声は、

何かが詰め込まれたような、重い音をしていた。



先輩は、片側にひいていた自転車を置いて、あたしの前に立つ。

あたしも自転車のスタンドを降ろして、先輩に向き合った。



「どうしたんですか……?」



あたしは、息を呑んで、俯きたいキモチを懸命に堪えて答える。



「俺、あれから考えたんだ。いや、ずっと考えてる」

「何……を?」

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