LLE <短>



まだ何も言われていないのに、あたしの声はすでに震えていた。



「……」



話し出したクセに、黙りこんでしまった先輩に不安が募って、あたしは先輩を呼ぶ。



「先輩……?」

「……お前のこと」

「え?」



先輩から小さく囁かれた言葉が、うまく思考に伝わらなくて、あたしは聞き返す。



「あの日から、お前が、頭の中に居座って離れない」

「先輩――」



それがどういう意味なのか、パニックになっている頭の中がうまく回らなくて、

あたしは、やっぱり先輩を呼んでいた。



「あの日、お前に突き放されてから、情けないけど……ずっとお前のことばっか考えてた。


俺、器用じゃないし、すぐひとつのことしか見えなくなっちゃうから……

お前にずっと、サミシイ想いさせてたんだって、気付けなかった。


俺、お前がいるのが、いつのまにか当たり前になってて、

いなくなってから、気が付くと、毎日お前のことを探してる。


お前じゃなきゃ、ダメなんだ。

だから……だから、俺の傍にいろよ。ずっと……


……お前のこと、スキだから」



途切れ途切れに、ひとつずつ紡がれていく言葉は、不器用な先輩らしかった。



「先輩……」

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