LLE <短>
「ハルナ」
先輩の声が、またあたしの名前を呼ぶ。
真剣な優しさを、真っ直ぐに向けた瞳と一緒に――
「10分の道のりを、30分かけて歩いていけるような……そんな二人になろう」
……先輩。
ねぇ、知ってる?
愛だけに生きたいってどれだけ願っても、
一人じゃそれは、叶わないんだ――
「うえ~ん……」
その言葉に、極限で保っていたあたしの涙腺のダムは、ついに決壊した。
「ほら、またお前は。すぐ泣く」
「だってぇ……だって、先輩がぁ……」
そう言って、先輩の腕があたしを引き寄せる。
初めての温もりに、後から後から、とめどない量の涙が溢れてくる。
泣くなって言う方がムリだよ。
今回は、絶対に先輩が悪いんだからね。
先輩の背中に手を回す余裕もないあたしは、ただ先輩の胸の真ん中で、額を押し付けて泣き続けた。
泣きじゃくるあたしを、先輩は何も言わずに、ずっと捕まえててくれた。