LLE <短>




そんなあたしに、先輩は満面の笑顔で、あたしの頭に手を伸ばす。



「よくできました」



先輩は、どんなものだって包み込んでしまえそうな、暖かくておっきな手で、

あたしの髪を、優しく撫でてくれた。


途端に、あたしのテンションのメーターは振り切って、制御不能になる。



「コウっ!」

「なんだよ」

「コーウ、コウコウ〜」

「アホ。もういいっつーの」

「エヘヘ〜」



急にぶっきらぼうになる先輩。

今度は先輩の方が照れているみたいだった。



こんな風に冷たくなる時は、先輩の照れ隠しだって、あたしは知っている。


ほらだって、髪の隙間から覗く耳が、ちょっとだけ赤くなってるのが見えるから。



ちょっとずつ、ちょっとずつ……

こうやってあたしは、先輩のことを知っていってる。


これからもあたしは、たくさんの新しい先輩を発見していくんだと思う。



そして、そのたびに、あたしはきっと、もっともっと先輩のことをスキになるんだ。



いつだって、今が一番スキで、それ以上なんてないって思うのに、

次の日になれば、また昨日より、先輩をスキになってるあたしがいる。


キリのないキモチが、少しだけ不安だけど、先輩で埋まっていく毎日が、嬉しくて仕方がない。

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