LLE <短>
先輩は、あたしのこと、ただの能天気だって思ってるかもしれないけど、
あたしだって、何も考えずに、こんなことばっかしてるわけじゃないんだよ。
毎回毎回、今にも底尽きそうな勇気を、どんなに搾り出して、
先輩の胸に飛び込んでっているかなんて、何にも知らないクセに……
先輩はもちろん悪くないに決まってるけど、そんなことを考え始めたら、だんだんと泣きそうになってきて、
あたしは慌てて、精一杯、いつものあたしのフリを取り繕った。
「おい。どうしたんだよ?」
不思議そうに、またあたしの顔を覗き込もうとする先輩。
先輩は、無防備すぎる。
先輩は、何も感じてないんだろうけど、
先輩の顔が近付いてくるたびに、あたしの心臓は、破裂しそうになってるんだから。
「な、なんでもないよ!」
耐え切れなくなって、先輩の視線から、あたしは大きく首を振って逃げる。
「……変なヤツ」
「じゃあ、授業始まるんで。また、放課後に」
「いや、もういいよ」
読み取れない表情で、いとも容易く跳ね返される、ラブコール。
「絶対また来ますから!」
もう一度、念を押して、あたしは先輩に愛を押し付ける。
先輩のバカ。
……鈍感。
あたしだって、先輩の冷たい態度に、傷付いてないわけじゃないんだからね――