LLE <短>
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希望と期待に満ちた、高校1年生の、春。
桜の花びらが、そよ風で舞い上がる景色の中、まだまだ体に馴染んでいない、真新しいブレザーを着て、
知り合ったばかりの友達と一緒に、何気なく見学に行ったサッカー部。
穏やかに照りつける太陽の下。
キラキラと汗の粒を反射させながら、ゴールだけを真っ直ぐに見据えて、
息を切らしてグラウンドを走り抜ける先輩の姿に、あたしの瞳は、一瞬で奪われた。
心を鷲掴みにされた気分。
それは、恋に堕ちた瞬間だった。
恋って“する”ものじゃなくて“堕ちる”ものなんだって。
いつだったか、愛に慣れたどこかの誰かが、得意そうに語っていた言葉。
その意味が、初めてわかった気がした。
もっともっと近付きたいと思ったのに、まだまだ幼いあたしの心には、勇気が足りなくて、
殺到するマネージャー候補を、唇を尖らせて、ただ横目で見つめていた。
それでも、のらりくらりと、行方知れずの想いは動き出す。
だけど、このままだったら、確実に少しの風に吹き飛ばされちゃいそうな……
そんな、小さな小さな恋。
芽吹き始めた若葉にそっと触れて、これから咲かせる花の色を、想像した。
“スキ”ってキモチが、こんなにも身近に転がっているものだったなんて、
こんなにも簡単に、見つかってしまうものだなんて、思いもしなかった。
先輩の名前すら知らずに通り過ぎていった、蕾の春――